トランスは大変頑丈な機器ではありますが、時として事故を引き起す場合もあります。
電源トランスは機器の電源供給の入り口として大変重要な存在であるため、事故が発生した場合の影響も大きなものになります。
事故によっては、火災の危険性も含んでいます。

事故を未然に防ぐためには、トランスに発生する事故を知り、正しい使い方をするだけでなく、事故を防止する対策を考慮することも重要です。
 
 
■設置不良

不安定な場所や振動が激しい場所に設置したり、温度・湿度などの環境が定格を超えた苛酷なものであったりした場合など、設置環境はトランスの事故の原因となります。

このような環境に設置することが予め分かっている場合は、設計段階でそのような配慮が必要です。
 
■過負荷使用

定格を超えた負荷を2次側に接続した場合、過電流によりコイルが異常発熱し、トランスが焼損したり、周囲に設置した機器に被害が及ぶ場合があります。

最悪の事態では火災事故になりかねませんので、2次側負荷に余裕を持ったトランス容量を選択して下さい。
 
■異常電圧による事故

供給電圧が大変不安定な地域でトランスを使用したり、またタップの配線間違いなどの人為的な問題で定格をはるかに超えた電源電圧を供給してしまったりした場合、瞬時的に鉄芯の磁束が飽和した状態となり、うなり音がしたりコイルが異常発熱したりします。

トランスを機器へ組込む場合や実際に機器を設置する場合は、電源電圧のチェックを必ず行って下さい。
 
■トランスの寿命による事故

トランスは大変故障しにくい機器であり、その寿命も比較的長いものです。
トランスの寿命は、一般的には20〜30年の寿命といわれていますが、予測することは困難です。

トランスに使用している主な材料の中で、寿命が比較的短いものは絶縁材料です。
絶縁材料は主に熱により劣化し、わずかな衝撃でダメージを受けます。

絶縁材料が損傷している部分は、短絡などの事故が発生しくなります。
 
■自然災害による事故

自然災害による事故でもっとも発生頻度の高いものは雷によるものです。
雷サージによる異常電圧は、トランスだけでなく2次側の負荷にも深刻な影響を及ぼします。
雷による被害を防止するためにはサージアブソーバ等の使用が必要です。

また、昨今問題となっている電源高調波による影響なども自然災害の一つと言えるかも知れません。
 
■白煙があがる・焦げた臭いがする

コイル内部の短絡や過負荷などにより、コイルが異常発熱し、白煙があがったり、焦げた臭いがしたりします。
 
■ぶーんという低いうなり音がする

トランスの設置不良やコアの締付け不良により、トランスからうなり音がしているものと考えられます。
トランスの設置ボルトなどにゆるみがないか、コイルや鉄芯に遊びがないか確認してみて下さい。
 
■2次側に電圧が誘起されない

コイル内で断線があり、2次側に電圧が誘起されないことが考えられます。
トランスをはずして、回路の導通をチェックしてみて下さい。
 
■トランスが異常に熱い

2次側が過負荷になっていたり、コイル内でレイヤーショートが発生したりしていることが考えられます。
入力電圧や2次側負荷が定格通りであるか確認してみて下さい。
 
発生した事故の原因を究明したり、その後の対策を検討するためにも事故解析の情報は重要であり、詳しければ詳しい程原因特定の可能性を高めます。
 
■設置環境

設置場所の温度や湿度、電圧変動の有無などできるだけ克明な設置環境、特に、電源コンセントについて、定格通りの電圧が供給されているかどうか確認が必要です。
 
■異常発生の状況

異常が発生したときの、できるだけ克明な状況。

例:電源オン後、1分以内に電源部から煙りがあがり、2次側負荷が全て停止した。
その後、電源部を取り外し、導通をチェックしたところ、入力側回路は断線しているようだった。
 
■設置環境

定格をこえる苛酷な環境での使用を避けてください。
特に水のかかるような場所、常時激しい振動がある場所などで使用する場合は、十分な対策をとる必要があります。
 
■保護装置の設置

コイル内に温度ヒューズなどの保護装置を設置し、事故発生時の影響をできるだけ少なくするように考慮して下さい。
 
■過負荷運転の回避

トランスには定格を超えた負荷を接続しないで下さい。
定格を超えた負荷は事故の原因となります。
 
■事態

施設内で機器の設置場所を移動し、スイッチを入れた直後に導通が切れ、その後電源は全く入らなくなった。2次側負荷には全く問題がなかったため、トランスの不良と断定された。
 
■解析

トランスの入力巻線に接続されていた温度ヒューズが破裂していたが、他の箇所には異常は認められなかった。
 
■原因

この機器は単相100V用の機器であった。
移動後の新しい設置場所にはいくつかの空きコンセントがあった。そのうちの1つは単相200V用のコンセントであったが特に何も表示されておらず、原因はこのコンセントから電源をとったことであった。

この場合、施設内の単相200Vブレーカーも同時に遮断されたため、サービスマンはこのコンセントはもともと電気がきていないものと勘違いしてしまい、原因が人為的なものではなく、トランスの問題としてしまった。
 
症状
チェック
考えられる原因
・トランスから白煙があがる ・焦げた臭いがする ・焼けただれたり、黒く焦げたりした箇所がないか ・短絡、過負荷などによるコイル内部の焼損
・配線間違い
・寿命などによる絶縁不良
・ぶーんと低い音がする ・トランスは確実に設置されているか
・鉄芯やコイルにがたつきはないか
・トランスの設置不良
・鉄芯の締付不良
・2次側に電圧が誘起されない ・各回路の導通はあるか ・異常電圧による保護装置(ヒューズ等)の動作
・入力側回路の断線
・トランスが異常に熱い ・入力電圧及び2次側負荷は定格通りであるか ・過負荷
・レイヤーショート