リアクトルやトランスの信頼性は、実は「樹脂の中に気泡を残さない」という地味な工程で大きく変わります。本記事では、樹脂封止(ポッティング)の役割と、気泡がもたらす部分放電のリスク、そして気泡を残さない工程のポイントを、メーカーの視点で解説します。

樹脂封止(ポッティング)とは

樹脂封止とは、コイルや鉄心をエポキシ樹脂などの絶縁樹脂で覆い固める加工です。ケースに樹脂を充填する「ポッティング」、巻線内部のすき間まで樹脂を浸み込ませる「含浸」などの方法があり、目的は次の通りです。

  • 絶縁強化:巻線間・対地間の絶縁耐力を高める
  • 防湿・防塵:吸湿や汚損による絶縁低下を防ぐ
  • 放熱:巻線の熱を樹脂経由で逃がし、温度上昇を抑える
  • 機械的保護:振動・衝撃・うなり(磁歪)から巻線を守る

気泡が招く「部分放電」のメカニズム

樹脂の中に気泡(ボイド)が残ると、そこが弱点になります。空気は樹脂より誘電率が低く、絶縁耐力も低いため、電圧がかかると気泡の中に電界が集中し、局所的な放電=部分放電(PD:Partial Discharge)が発生します。

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部分放電の怖さは、すぐには壊れないのに、内部で少しずつ絶縁を蝕む点にあります。初期は外から気づきにくく、ある日突然の絶縁破壊として表面化します。電圧が高いリアクトル・トランスほど、気泡は致命傷になり得ます。

気泡を残さない工程|真空含浸・脱泡

気泡対策の要は、樹脂を注ぐ前後で空気を徹底的に抜くことです。北川電機では、次のような工程管理で気泡の少ない封止を実現しています。

  • 真空注型・真空含浸:減圧環境で樹脂を注ぎ、巻線のすき間の空気を引き出す
  • 脱泡:樹脂自体に含まれる気泡・溶存空気を事前に除去する
  • 予熱・粘度管理:樹脂の粘度を下げ、細部まで確実に浸透させる
  • 硬化(キュア)管理:温度プロファイルを守り、収縮ひずみや未硬化を防ぐ

こうした地道な管理の積み重ねが、部分放電の起きにくい、長寿命な製品につながります。

樹脂封止で得られる性能

項目

効果

絶縁

巻線間・対地間の絶縁耐力が向上。気泡が無ければ部分放電も抑制

放熱

巻線の熱を樹脂経由で放散し、温度上昇を低減(樹脂の熱伝導率が効く)

防湿・耐環境

吸湿・結露・粉塵・薬品から巻線を保護し、絶縁の経時劣化を防ぐ

機械強度

振動・衝撃・磁歪うなりに対して巻線を固定し、断線・ゆるみを防ぐ

封止樹脂の選定ポイント

樹脂は「入れれば良い」わけではなく、用途に応じた選定が重要です。特に注意したいのが熱膨張係数(CTE)の整合です。

  • 熱膨張係数(CTE):銅(コイル)や鉄(金具)とのCTE差が大きいと、温度変化で応力が生じ樹脂割れの原因に。差を離しすぎても近づけすぎても問題が出るトレードオフです(詳細は次回記事で)
  • 熱伝導率:放熱を重視するリアクトルでは高熱伝導フィラー入り樹脂が有利
  • 絶縁耐力・耐熱クラス:使用電圧・温度(E/B/F/H種)に合わせる
  • 粘度・可使時間:含浸性と作業性のバランス

リアクトル/トランスでの適用

同じ樹脂封止でも、製品によって重視するポイントが変わります。北川電機では用途に合わせてカスタム設計・製造しています。

▲ 弊社の樹脂封止品の一例。コイルを黒いエポキシ樹脂で封止した高圧トランスです。真空含浸・脱泡で内部の気泡を抑え、絶縁・放熱・機械的保護を確保しています。

よくある質問

ポッティングと含浸(ワニス処理)の違いは?

ポッティングはケースに樹脂を充填して塊状に固める方法、含浸は巻線内部のすき間まで樹脂/ワニスを浸透させる方法です。どちらも空気を追い出し絶縁・保護を高める点は共通で、製品や要求に応じて使い分け・併用します。

部分放電はなぜそんなに問題なのですか?

部分放電は一度で壊すのではなく、樹脂を少しずつ侵食して絶縁を劣化させます。初期は気づきにくく、進行するとある日突然の絶縁破壊につながるため、「気泡を残さない=部分放電を起こさせない」ことが長寿命化の鍵です。

どんな樹脂が使われますか?

エポキシ樹脂が代表的で、絶縁・機械強度・耐熱に優れます。放熱を重視する場合は高熱伝導タイプ、柔軟性が必要な場合はシリコーンやウレタンなど、用途に応じて選定します。

気泡はどうやって取り除くのですか?

減圧環境で樹脂を注ぐ真空注型・真空含浸、樹脂中の空気を抜く脱泡、粘度を下げて細部まで浸透させる予熱・粘度管理などを組み合わせます。工程管理の丁寧さが仕上がりの差になります。

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