トランス設計で「漏れインダクタンス(漏れL)」という言葉をよく聞きます。普段は嫌われ者ですが、回路によっては主役にもなります。本記事では、高周波トランスを設計・製造する北川電機(KEC)が、漏れインダクタンスの意味と活用を解説します。
漏れインダクタンスとは?
漏れインダクタンスとは、トランスの一次巻線と二次巻線が完全には磁気結合しないために生じるインダクタンス成分です。理想的なトランスでは一次の磁束はすべて二次に伝わりますが、現実には一部の磁束が相手の巻線を通らず「漏れ」ます。この漏れ磁束が生むのが漏れインダクタンスです。
普段は「厄介者」
一般の電源トランスでは、漏れインダクタンスは次のような悪影響の原因になり、できるだけ小さくしたいとされます。
- 負荷変動時の電圧変動(電圧降下)が大きくなる
- スイッチング時にサージ電圧(スパイク)を生む
- 電力伝送の効率低下
DABでは「主役」になる
ところが、DABコンバータや位相シフトフルブリッジでは、漏れインダクタンスが電力を伝送する素子そのものとして使われます。二次側との位相差で漏れLに電圧がかかり、そこを流れる電流=電力になります。伝送電力は漏れLとスイッチング周波数・位相差で決まるため、漏れLを狙った値に作り込むことが性能を左右します。
漏れインダクタンスは何で決まるか
漏れLは主に巻線の配置・構造で変わります。
- 一次・二次を離すほど漏れLは大きくなる
- サンドイッチ巻き(一次で二次を挟む)にすると漏れLは小さくなる
- 巻き幅・層数・コア形状によっても変化する
つまり、小さくするのも、狙った値に大きくするのも、巻線設計の腕次第です。
メーカー視点
北川電機は、高周波トランスで漏れインダクタンスを設計値どおりに作り込むカスタム設計・製造を行っています。DABなど漏れLを活用する回路の性能・効率づくりを支えます。
よくある質問
漏れインダクタンスは小さいほど良いのですか?
一般の電源・絶縁トランスでは小さいほど電圧変動やサージが減り有利です。ただしDAB等では漏れLが電力伝送素子になるため、逆に「狙った値に作り込む」ことが重要になります。用途次第です。
漏れインダクタンスと励磁インダクタンスの違いは?
励磁インダクタンスは磁化に必要な主インダクタンス(一次・二次を結ぶ)で、漏れインダクタンスは結合しない漏れ磁束による成分です。等価回路では別々に表されます。
どうやって漏れLを調整しますか?
一次・二次巻線の距離や配置(サンドイッチ巻き等)、巻き幅、コア形状で調整します。外付けインダクタで補う方法もあります。
DAB・双方向コンバータ向け高周波トランスのご相談
漏れインダクタンスを作り込むカスタム設計。試作1台から量産まで対応します。
まとめ
- 漏れインダクタンスは、一次・二次が完全結合しないために生じるインダクタンス成分。
- 一般トランスでは電圧変動・サージの原因で小さくしたい。DABでは電力伝送の主役で作り込む。
- 巻線の配置・構造で決まり、設計技術がものを言う。




