双方向コンバータや大電力DC-DCで「どうやって電力の量と向きを操っているのか」——その答えの多くが位相シフト制御です。本記事では、高周波トランスを設計・製造する北川電機(KEC)が、位相シフト制御の仕組みと、鍵を握る漏れインダクタンスの役割を解説します。

位相シフト制御とは?

位相シフト制御とは、2つのブリッジ(またはレグ)が出力する電圧波形の「タイミングのずれ=位相差」を使って、伝送する電力を制御する方式です。それぞれのブリッジは高周波の矩形波を出しますが、その波形をどれだけずらすかで、トランスを介して流れる電力の大きさと向きが決まります。

仕組み:位相差が電力を決める

一次側と二次側のブリッジが出す電圧波形に位相差をつけると、その差の電圧が高周波トランスの漏れインダクタンスにかかり、電流=電力が流れます。ポイントは次の通りです。

  • 位相差を大きくするほど、伝送電力が増える(ある点まで)。
  • 位相の進み/遅れを入れ替えると、電力の向きが反転する(=双方向)。
  • 伝送電力は、位相差・スイッチング周波数・漏れインダクタンスで決まる。

つまり、ハードを変えずに位相(ソフトウェア)だけで電力の量と向きを操れるのが、位相シフト制御の最大の魅力です。

漏れインダクタンスが「電力を運ぶ素子」

一般のトランスでは漏れインダクタンスは"できるだけ小さくしたい厄介者"ですが、位相シフト制御では漏れインダクタンスが電力を伝送する主役になります。伝送電力が漏れLに反比例するため、漏れLを狙った値に作り込むことが、性能・効率を左右します。ここに高周波トランス設計の腕が問われます。

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ソフトスイッチング(ZVS)との相性

位相シフト制御は、スイッチのオン/オフを電圧ゼロの瞬間に行うゼロ電圧スイッチング(ZVS)を実現しやすく、スイッチング損失を抑えられます。SiC・GaNで高周波化しても効率を保ちやすいため、大電力・高効率の双方向電源に適しています。

主な用途

  • DABコンバータ:両側フルブリッジ+高周波トランスの双方向絶縁コンバータ。位相シフト制御の代表例。
  • 位相シフトフルブリッジ:一方向の絶縁DC-DCで広く使われる高効率方式。
  • EV双方向充電(V2G/V2H)、蓄電システム、産業用電源など。

よくある質問

位相シフト制御とPWM制御は違いますか?

PWMがオン時間の幅(デューティ)で電圧を制御するのに対し、位相シフト制御は2つのブリッジ間の位相差で電力を制御します。位相シフトは双方向・ソフトスイッチングと相性が良い点が特徴です。

なぜ漏れインダクタンスが重要なのですか?

位相シフト制御では漏れインダクタンスが電力を伝送する素子として機能します。伝送電力が漏れLに反比例するため、狙った値に作り込むことが性能・効率に直結します。

位相差を大きくすればいくらでも電力を増やせますか?

ある位相差までは増えますが、それを超えると逆に減少し、電流ストレスや損失も増えます。実際には適正な範囲で運転します。

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まとめ

  • 位相シフト制御は、2つのブリッジの位相差で伝送電力の大きさと向きを操る方式。
  • 電力を運ぶのは高周波トランスの漏れインダクタンス。漏れLの作り込みが性能を決める。
  • ZVSと相性が良く高周波・大電力・双方向に強い。DABや位相シフトフルブリッジで活躍。

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