インバータ機器を使うと、「なぜか近くの機器が誤動作する」「ノイズ規格に通らない」といった問題が起こることがあります。その主犯の一つがコモンモードノイズです。本記事では、リアクトルを設計・製造する北川電機(KEC)が、コモンモードノイズの正体と、ゼロ相リアクトルで抑える仕組みを解説します。

コモンモードノイズとは?

コモンモードノイズとは、複数の電線(例:R・S・Tやライブ・ニュートラル)に、同じ向きで同時に流れ、大地(アース)を通って電源へ戻るノイズ電流です。電線を「行き」と「帰り」で見ると、通常の信号・電力の電流(ノーマルモード)は行き帰りで逆向きに流れます。一方コモンモードは、全ての線が同じ向きに流れるのが特徴です。

なぜ発生するのか

コモンモードノイズの主な発生源は、インバータなどの高速スイッチングです。スイッチングで電位が急激に変動すると、配線や機器と大地の間にあるわずかな静電容量(浮遊容量)を通じて、高周波のコモンモード電流が大地へ流れ出します。SiC・GaNで高速化するほど、この傾向は強まります。

ノーマルモードとの違い

項目

ノーマルモード

コモンモード

流れ方

行き帰りで逆向き(電線間)

全線が同じ向き(対地)

帰り道

もう一方の電線

大地(アース)

主な対策

ノーマルモード用フィルタ・リアクトル

ゼロ相リアクトル・コモンモードチョーク

コモンモードは全線が同じ向きに流れるため、電線間に入れる普通のフィルタでは取りにくく、専用の対策部品が必要です。

ゼロ相リアクトルで抑える仕組み

ここで活躍するのがゼロ相リアクトル(コモンモードチョーク)です。これは、すべての電線を1つの鉄心(コア)にまとめて通した部品です。動作のポイントは磁束の打ち消しにあります。

  • ノーマルモード電流(行き帰り逆向き):鉄心の中で磁束が互いに打ち消し合い、インピーダンスはほぼゼロ。電力はそのまま素通りする。
  • コモンモード電流(全線同じ向き):磁束が足し合わさり、大きなインダクタンス=高いインピーダンスが生じる。コモンモード電流だけを妨げる。

つまりゼロ相リアクトルは、必要な電力(ノーマルモード)は通し、ノイズ(コモンモード)だけを選択的に抑えるという、狙い撃ちの対策ができるのです。

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どこで使われるか

  • インバータの出力側:モーターケーブルから放射・伝導するコモンモードノイズを抑制。軸電流によるベアリング劣化の低減にも寄与。
  • EMIフィルタ:電源入力部でコモンモードチョークとして、伝導ノイズを規格値以下に抑える。
  • 各種電源装置:ノイズ規格(EMC)適合のための必須部品。

北川電機のリアクトル

北川電機は、ACリアクトル・DCリアクトルに加え、ゼロ相(コモンモード)リアクトルなど、ノイズ・高調波対策のコイルを用途に合わせてカスタム設計・製造しています。コア材の選定と巻線構造で、狙った周波数帯のノイズを効果的に抑えます。

よくある質問

コモンモードとノーマルモードの見分け方は?

電流の流れる向きで見分けます。行きと帰りで逆向きに流れるのがノーマルモード(電線間)、全ての線が同じ向きに流れ大地を通って戻るのがコモンモードです。対策部品も異なります。

ゼロ相リアクトルとコモンモードチョークは同じですか?

ほぼ同じものを指します。すべての電線を1つのコアに通し、コモンモード電流に高インピーダンスを示してノイズを抑える部品です。呼び方が分野で異なるだけです。

なぜインバータでコモンモードノイズが問題になるのですか?

高速スイッチングによる急峻な電位変動が、浮遊容量を通じてコモンモード電流を生むためです。SiC・GaNで高周波化するほど顕著になり、周辺機器の誤動作や規格不適合、軸電流の原因になります。

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まとめ

  • コモンモードノイズは、全ての電線に同じ向きで流れ、大地を通って戻るノイズ電流。インバータの高速スイッチングが主因。
  • ノーマルモード(行き帰り逆向き)とは流れ方が違い、専用の対策が必要。
  • ゼロ相リアクトルは全線を1つのコアに通し、電力は通しノイズだけを高インピーダンスで抑える。

ノイズ・高調波対策のリアクトルは、リアクトルお問い合わせから北川電機へ。