インバータや整流装置を電源につなぐと、実は電源側へ「高調波電流」という歪んだ電流が流れ出します。これを抑える定番部品が入力側の三相ACリアクトルです。本記事では、電源用トランス・リアクトルを設計・製造する北川電機(KEC)が、「なぜACリアクトルで高調波が減るのか」をやさしく解説します。
三相ACリアクトルとは?
三相ACリアクトルとは、インバータやコンバータの入力側(電源と整流器の間)に、各相に直列で入れるコイル(インダクタ)です。三相交流に対応するため各相(R・S・T)に入れ、入力電流の高調波抑制と力率改善を担います。「入力リアクトル」「電源側リアクトル」とも呼ばれます。
なぜ高調波が発生するのか
インバータの入力段は、多くの場合「ダイオード整流+平滑コンデンサ」で交流を直流に変えています。このとき問題になるのが、コンデンサは電圧がピークに近い瞬間しか充電されないという性質です。
- 電源電圧が平滑コンデンサの電圧を上回る一瞬だけ、大きな電流がドッと流れる
- それ以外の期間はほとんど電流が流れない
結果として、入力電流は正弦波ではなく鋭いパルス状に歪んだ波形になります。この歪んだ電流には、基本波の整数倍の周波数成分=高調波が多く含まれます。高調波は、電源設備の過熱、他機器の誤動作、力率の悪化、規格不適合などの原因になります。
ACリアクトルが高調波を抑えるしくみ
ここでACリアクトルが効きます。リアクトル(コイル)には、電流を急に変化させようとすると、それを妨げる向きに電圧が生じるという性質があります。式で書くと次の通りです。
v = L × (di/dt)
電流の変化率(di/dt)が大きいほど、それを打ち消す電圧が大きく発生します。つまりリアクトルは、先ほどの「ドッと流れる鋭いパルス電流」に対してブレーキをかけ、電流の立ち上がりをなだらかにし、流れる期間を横に広げます。
その結果、パルス状だった入力電流は正弦波に近いなだらかな波形へと変わり、含まれる高調波成分が大きく減少します。これが「ACリアクトル=高調波抑制」の正体です。
三相である理由と配置
三相インバータ・コンバータでは、R・S・Tの三相それぞれに電流が流れます。そのため各相に1つずつ(三相分)リアクトルを入れることで、三相のバランスを保ちながら各相の電流波形を整えます。配置は「電源 → ACリアクトル → 整流器」の順で、電源と整流回路の間に入ります。
ACリアクトルの効果
効果 | 内容 |
|---|---|
高調波抑制 | 入力電流を正弦波に近づけ、電源へ流出する高調波を低減。高調波ガイドライン対応にも寄与 |
力率改善 | 電流波形の歪みが減ることで力率が改善する |
電源保護 | 電源電圧の急変・サージ・瞬時電圧変動から整流回路を保護する |
コンデンサ長寿命化 | 突入的な充電電流をやわらげ、平滑コンデンサの負担を軽減する |
設計のポイント(メーカー視点)
ACリアクトルは「入れれば良い」わけではなく、用途に応じた設計が重要です。
- %インピーダンス:高調波抑制効果はリアクトルのインピーダンス(目安3〜5%)で決まる。大きいほど抑制効果は高いが、電圧降下も増えるためバランスが要る。
- 飽和対策:定格電流や突入電流で磁気飽和しないコア設計。飽和するとインダクタンスが低下し効果が失われる。
- 発熱・損失:巻線の銅損・コアの鉄損を抑え、温度上昇を管理する。
北川電機は、用途・容量に合わせたACリアクトル・DCリアクトルを小型・軽量でカスタム設計・製造しています。
よくある質問
ACリアクトルとDCリアクトルの違いは?
ACリアクトルは電源と整流器の間(交流側)に入れて入力電流の高調波抑制・力率改善・電源保護を行います。DCリアクトルは整流後の直流部(DCリンク)に入れて直流電流を平滑します。目的と設置位置が異なり、併用されることもあります。
ACリアクトルは必ず必要ですか?
小容量では省略される場合もありますが、高調波ガイドラインへの対応、力率改善、平滑コンデンサの保護の観点から、多くの産業用インバータで設置が推奨・要求されます。
%インピーダンスは大きいほど良いのですか?
高調波抑制効果は高まりますが、その分だけ電圧降下が大きくなり、出力に影響します。一般に3〜5%程度が目安で、要求される抑制レベルと許容できる電圧降下のバランスで選定します。
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まとめ
- 三相ACリアクトルは、インバータ入力側で高調波抑制・力率改善・電源保護を担うコイル。
- 整流+コンデンサが生む鋭いパルス電流を、リアクトルが v=L·di/dt でなだらかにし、正弦波に近づけて高調波を減らす。
- 効果は%インピーダンスで決まり、飽和・発熱を抑える設計が重要。




