インバータや受変電設備の回路図で当たり前のように登場する「リアクトル」。コイルの一種であることは知っていても、「トランスと何が違うのか」「なぜ発熱するのか」まで説明できる方は意外と多くありません。本記事では、カスタムリアクトルの設計・製造・自社評価まで一貫して手がける北川電機(KEC)が、リアクトルの定義と種類、用途を整理したうえで、メーカーだからこそ語れる発熱のメカニズムと放熱・静音化の設計ポイントを掘り下げます。

リアクトルとは ── コイル(インダクタ)の一種

リアクトルとは、鉄心などに導線を巻いたコイル(インダクタ)の一種で、「インダクタンス(L)」という性質を積極的に利用する電気部品です。英語では reactor/inductor、チョークコイルとも呼ばれます。コイルには「電流の急な変化を妨げ、エネルギーを磁界として一時的に蓄える」という性質があります。交流に対してはリアクタンス(XL=2πfL)として働き、周波数が高いほど電流を流しにくくします。この作用を使って、リアクトルは次の役割を担います。

  • 電流を平滑にする(リップルを抑える)
  • 電流を制限する(突入電流・短絡電流の抑制)
  • 特定周波数の電流=高調波を抑える
  • 無効電力を調整し、力率を改善する

リアクトルとトランスの違い

同じ「鉄心+巻線」でも、リアクトルとトランス(変圧器)は目的が異なります。トランスは2つ以上の巻線を持ち、電磁誘導によって一次側から二次側へエネルギーを伝えながら電圧を変換します(絶縁の役割も担う)。リアクトルは基本的に巻線は1つ(三相では3組)で、エネルギーを他へ伝えるのではなくインダクタンスそのものを利用して電流やインピーダンスを整えます。ざっくり言えば、「電圧を変えるのがトランス、電流の流れ方を整えるのがリアクトル」です。

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リアクトルの種類と用途

リアクトルは使われる回路と目的によって呼び名が変わります。代表的なものを整理しました。

種類

主な機能

主な用途

直列リアクトル(力率改善用)

進相コンデンサと直列に接続し、投入時の突入電流と高調波共振を抑える

受変電設備の力率改善設備

交流リアクトル(ACL)

インバータの交流入力側で高調波抑制・力率改善・サージ吸収

インバータ、PCSの入力側

直流リアクトル(DCL)

直流中間回路で電流リップルを平滑し高調波を抑制

インバータの中間回路

平滑リアクトル

整流回路・チョッパ出力の直流リップルを平滑化

電源装置、直流き電

限流リアクトル

短絡時の電流を抑え、遮断器の負担を軽減

系統・母線の保護

分路リアクトル

長距離送電線の充電容量を補償し電圧上昇を抑制

送電系統

高周波リアクトル

数十kHz帯のスイッチング回路で電流を制御

高周波電源、レーザー電源

力率改善は進相コンデンサと直列の「直列リアクトル」が代表例で、一般に定格容量の6%または13%程度のリアクタンスを持つものが用いられます(回路の高調波状況により選定)。高調波抑制は入力側のACLと中間回路のDCLを使い分け、同程度の定数ならDCLの方が抑制効果が高いとされ、ACLはサージ吸収にも寄与します。

なぜリアクトルは発熱するのか

リアクトルの発熱は、内部で生じる「損失」が熱に変わるものです。主に3種類あります。

  • 銅損(巻線損):巻線抵抗による I²R 損。電流が大きいほど増え、高周波では表皮効果・近接効果で実効抵抗が上がり、リップルや高調波成分も銅損を押し上げます。
  • 鉄損(コア損):鉄心のヒステリシス損と渦電流損。周波数と磁束密度に依存し、リップルや高調波を含む用途では基本波以外の成分がコア損を増やすため、コア材の選定が発熱を左右します。
  • ギャップのフリンジング損:磁気飽和を防ぎインダクタンスを設定するため鉄心にギャップを設けますが、その周辺からにじむ漏れ磁束が近くの巻線導体に渦電流を誘起し、局所的なホットスポットを生むことがあります。

特に3番目は、カタログ上の抵抗値だけでは見えない「設計と製造の腕」が問われる部分です。全体温度は規格内でも一部だけが過熱し、絶縁劣化や寿命低下を招きます。

放熱・静音化と設計のポイント(メーカー視点)

発熱をゼロにはできない以上、リアクトル設計は「損失を減らす」と「出た熱を上手く逃がす」の両輪です。北川電機が実際に手を動かしている観点を挙げます。

  • コア材の選定:珪素鋼板・アモルファス・圧粉磁心・フェライトなどを、使用周波数と損失のトレードオフで選定。
  • 巻線設計:高周波では表皮・近接効果を抑えるためリッツ線や平角線、導体分割を検討。
  • ギャップ設計:単一ギャップを分割してフリンジング磁束を分散し、局所発熱を抑える。
  • 含浸(ワニス含浸):巻線の隙間を樹脂で埋めて熱伝導を高め、鉄心やケースへ熱を逃がす。同時に磁歪による唸り音を抑える静音化にも効く。
  • ポッティング(樹脂充填):放熱経路の確保に加え、防湿・防振・絶縁を両立。

そしてこれらは、温度上昇試験・評価技術による裏付けがあって初めて信頼できます。実際の電流・リップル・周囲温度・冷却条件を模した温度上昇試験や連続通電試験で、狙いどおりの温度に収まっているかを確認することが不可欠です。

北川電機のカスタムリアクトル

北川電機は、ACリアクトル・DCリアクトル・高周波リアクトル・三相リアクトルを、用途に合わせてフルカスタムで設計・製造しています。太陽光・風力発電のPCS用インバータ、鉄道・建設機械・工作機械のモータードライブ用インバータ、溶接機電源、ファイバレーザー等の実績があり、10kV以上の高耐圧、数十kHz帯でも300〜500Aクラスの大電流、静音化対策にも対応します。コア材選定から試作、ランニング試験、量産まで社内で完結します。

まとめ

  • リアクトルはコイル(インダクタ)の一種で、電流を整え、高調波を抑え、力率を改善する部品
  • トランスが「電圧を変換」するのに対し、リアクトルは「電流の流れ方を整える」
  • 発熱は銅損・鉄損・ギャップのフリンジング損に由来し、コア材・巻線・ギャップ・含浸・評価試験の設計で抑え込む

リアクトルの発熱・騒音・サイズ・特性でお困りなら、設計から自社評価まで一貫対応する北川電機にご相談ください。仕様のご相談・お見積もりはお問い合わせから、製品の詳細はリアクトル製品ページをご覧ください。