インバータの中では、交流を整流して直流に変えたあと、その直流を「なめらかに」する工夫が必要です。その主役の一つがDCリアクトルです。本記事では、電源用リアクトルを手掛ける北川電機(KEC)が、「なぜDCリアクトルで直流が平滑できるのか」をやさしく解説します。

DCリアクトルとは?

DCリアクトルとは、インバータの直流部(DCリンク)に直列で入れるコイルです。整流回路の後、平滑コンデンサの前後に配置され、直流電流を平滑(なめらかに)する役割を担います。「直流リアクトル」「DCL」とも呼ばれます。

整流しただけの直流は「脈打っている」

交流をダイオードで整流すると、確かにプラス方向の電圧にはなりますが、その波形は山と谷が残った脈流(リップルのある直流)です。完全にフラットな直流ではありません。このリップルをそのまま使うと、電流が大きく波打ち、機器の性能や部品寿命に悪影響を与えます。

DCリアクトルが平滑できるしくみ

リアクトル(コイル)は、電流を急に変えようとするとそれを妨げる性質を持ちます(v = L・di/dt)。さらに重要なのが、リアクトルは磁界の形でエネルギーを蓄えたり放出したりできるという点です。

  • 電流が増えようとするとき:リアクトルがエネルギーを蓄えて、増加を抑える
  • 電流が減ろうとするとき:蓄えたエネルギーを放出して、減少を補う

この「蓄える・放す」を繰り返すことで、波打っていた直流電流がならされ、なめらかで連続的な電流になります。これがDCリアクトルによる平滑の正体です。水を貯めて流量を一定に保つ「ため池」のような働き、とイメージすると分かりやすいでしょう。

コンデンサとの役割分担(LCフィルタ)

平滑には、DCリアクトル(L)と平滑コンデンサ(C)がペアで働きます。ここがよくある混同ポイントです。

部品

平滑する対象

働き

DCリアクトル(L)

電流

電流の急変を妨げ、電流をなめらかにする

平滑コンデンサ(C)

電圧

電圧の変動を吸収し、電圧を一定に保つ

リアクトルは電流を、コンデンサは電圧をならす——この2つがLCフィルタとして協働することで、質の高い直流が得られます。

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DCリアクトルの効果

  • 高調波のさらなる低減:入力電流の波形が改善し、ACリアクトルと合わせて高調波を抑える。
  • コンデンサの長寿命化:平滑コンデンサに流れるリップル電流を減らし、発熱と劣化を抑える。
  • 力率改善:電流波形が整うことで力率が向上する。
  • ピーク電流の抑制:突入的な電流を抑え、回路各部の負担を軽くする。

設計のポイント(メーカー視点)

DCリアクトルは、必要なインダクタンスを確保しつつ、直流重畳(大きな直流電流が流れる状態)でも磁気飽和しない設計が肝心です。飽和するとインダクタンスが下がり、平滑効果が失われます。北川電機では、ギャップ設計やコア選定により、直流重畳に強いDCリアクトルをカスタム設計・製造しています。

よくある質問

DCリアクトルとコンデンサはどちらか片方でよいですか?

役割が異なるため、基本は併用します。リアクトルは電流を、コンデンサは電圧を平滑します。両者をLCフィルタとして組み合わせることで、リップルの少ない質の高い直流が得られます。

DCリアクトルを入れるとどんなメリットがありますか?

高調波の低減、平滑コンデンサのリップル電流軽減による長寿命化、力率改善、ピーク電流の抑制などが得られます。特にコンデンサ保護と省スペース化の面で有利です。

「直流重畳」とは何ですか?

コイルに交流成分だけでなく大きな直流電流が重なって流れる状態のことです。DCリアクトルはこの直流重畳下でも磁気飽和しないよう、ギャップ設計などで対策する必要があります。

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まとめ

  • DCリアクトルは、インバータの直流部で直流電流を平滑するコイル。
  • インダクタンスで電流の急変を妨げ、エネルギーを蓄放電することで脈流をなめらかにする。
  • 電流を平滑するL(リアクトル)と、電圧を平滑するC(コンデンサ)がLCフィルタとして協働する。

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