フルブリッジなどのインバータで高周波トランスを駆動していると、負荷は変えていないのに過電流保護が働く、トランスの電流が片側の半周期だけ鋭く尖る、といった現象に出会うことがあります。その原因のひとつが直流偏磁です。巻線電圧の公式(4.44と4)を扱った記事では、正負のボルト秒積の不均衡が偏磁を起こすことを概略だけ紹介しました。本記事はその深掘りとして、トランス・リアクトルメーカーの北川電機(KEC)が、「なぜ磁束密度は電圧の積分で決まるのか」というファラデーの法則の基本から、偏りがどこまで進むのか、そして「Bmに余裕を持たせれば防げるのか」という疑問までを、一般的な設計の考え方として整理します。

直流偏磁とは ── 磁束の往復が片側に寄る現象

トランスのコア(鉄心)の中では、交流電圧に合わせて磁束密度Bが +Bm と −Bm のあいだを往復しています(Bmは設計上の最大磁束密度)。この往復の中心がゼロからずれ、片側へ寄ってしまった状態が直流偏磁(単に偏磁とも。英語では DC bias、フルブリッジで少しずつ片側へ進む様子は flux walking とも呼ばれる)です。

原因は、巻線に加わる電圧に含まれる直流成分です。正の半周期と負の半周期で「電圧×時間」の面積がわずかでも違うと、その差の分だけ磁束が戻りきらず、往復の中心がずれていきます。寄った側のピークが飽和磁束密度Bsに近づくとコアは磁気飽和に入り、その半周期の終わりだけ励磁電流が急増します。

  • インバータ駆動の高周波トランス(フルブリッジ型のDC-DCコンバータなど)で特に問題になりやすい。本記事はこのケースを中心に扱う。
  • 商用周波の電力用変圧器でも、直流送電の帰路電流や地磁気誘導電流(GIC)が中性点から流れ込むことによる直流偏磁が知られている。
  • モータの巻線に直流分が加わった場合も直流電流は流れるが、磁路にエアギャップがあるため、トランスのようにわずかな直流で急激に飽和するのとは現れ方が異なる(主に損失やトルクの脈動として現れる)。

B-H曲線そのものの読み方(透磁率・飽和・ヒステリシス)は次の記事で解説しています。本記事では「動作点がB-H曲線の上をどう動くか」に絞って説明します。

関連記事磁気飽和・B-H曲線とは?コア設計とリアクトルのギャップをメーカーが解説

磁束密度はなぜ「電圧の積分」で決まるのか

直流偏磁を理解する鍵は、「コアの磁束密度Bを直接決めているのは、電流ではなく巻線にかかる電圧」という点です。直感に反するかもしれないので、偏磁を考えるのに必要な部分に絞って、ファラデーの法則から順に確かめます。

出発点:ファラデーの法則

巻数Nのコイルを貫く磁束Φが時間とともに変化すると、コイルには起電力eが生じます(ファラデーの電磁誘導の法則)。

$$e = -N\frac{d\Phi}{dt}$$

マイナス符号は、起電力が「磁束の変化を妨げる向き」に生じることを表しています(レンツの法則)。トランスの一次巻線では、電源が加える電圧vとこの起電力がつり合っています。巻線の抵抗をいったん無視し、電源から見た向きで書き直すと次のようになります。

$$v = N\frac{d\Phi}{dt}$$

この式は「電圧vをかけられた巻線では、磁束が1秒あたり v/N [Wb] の速さで変化し続けなければならない」と読めます。電圧が大きいほど磁束は速く変わり、電圧がゼロの間は磁束は変化せず、その値のまま保たれます。

両辺を時間で積分する

変化の速さがわかれば、変化した量は積分で求まります。上の式を時刻0からtまで積分すると、

$$\Phi(t) = \Phi(0) + \frac{1}{N}\int_0^t v\,dt$$

コアの断面積をAeとし、磁束が断面に一様に通っているとすれば Φ = B × Ae なので、

$$B(t) = B(0) + \frac{1}{N A_e}\int_0^t v\,dt$$

∫v dt は電圧波形とゼロの線で囲まれた面積で、ボルト秒積(電圧時間積)と呼ばれます。つまり、Bの変化量=電圧波形の面積÷(巻数N×断面積Ae)です。正の電圧が加わっている間はBが増え、負の電圧の間は減る。正と負の面積が等しければ、1周期でBは元の値に戻ります。

ここから、次の3点が読み取れます。

  • 決まるのは「変化量」で、出発点B(0)は別に決まる。電源投入時の残留磁束や投入のタイミングで出発点がずれると、正常な交流でも片側へ寄った往復になる。これは励磁突入電流が生じる理由と同じ。
  • 電流は結果として決まる。磁界の強さHと励磁電流iの関係は、アンペールの法則から H = N·i / le(leは磁路長)。巻線は「電圧が要求するB」を作るのに必要なだけのH、つまり電流を流す。B-H曲線が立っている範囲ではわずかな電流で済むが、飽和に近づくとBを少し増やすだけで大きなHが必要になり、電流が急増する。
  • NとAeが大きいほど、同じ電圧でもBの振れは小さく済む。同じボルト秒積を、より多くの巻数とより太いコアで受け止めるからである。

巻線抵抗を無視できる条件

実際の巻線には抵抗Rがあり、正確には次の式になります。

$$v = R\,i + N\frac{d\Phi}{dt}$$

抵抗による電圧降下 R·i が、加える電圧vに比べて十分小さければ、「Bは電圧の積分」がそのまま成り立ちます。周波数で言い換えると、励磁インダクタンスLmのリアクタンス 2πf·Lm が抵抗Rよりずっと大きい、という条件です。数十kHzで動く高周波トランスでは、2πf·Lm が数百Ω〜数kΩ、巻線と素子の抵抗が0.1Ω程度といった桁の違いになることが多く、この近似はよく成り立ちます。

ただし、周波数ゼロ、つまり直流に対してはこの条件がまったく成り立ちません。インダクタンスは直流電圧を支えられず、直流に対して電流を制限するのは抵抗Rだけです。この事実が、後で説明する「偏りがどこで止まるか」を決めます。

設計式 V = 4.44 f N Bm Ae・V = 4 f N Bm Ae との関係

「Bは電圧の積分」を周期的な電圧に当てはめたものが、トランス設計の基本式です。方形波なら、半周期 1/(2f) のボルト秒積 V/(2f) で、Bが −Bm から +Bm まで 2Bm だけ振れます。2Bm × N × Ae = V/(2f) を整理すると V = 4 f N Bm Ae。正弦波では実効値で書くために波形率1.11が掛かり、V = 4.44 f N Bm Ae になります。

どちらも Bm = V ÷(係数 × f × N × Ae) という形で、同じ電圧なら巻数N・断面積Ae・周波数fのどれを大きくしてもBmは下がります。偏磁を考えるうえで大事なのは、この式が「正と負のボルト秒積がつり合っている」ことを前提にしている点です。つり合いが崩れたときに何が起きるかが、次の節以降の話になります。4.44と4の導出や、取り違えたときに起きる問題は次の記事で解説しています。

関連記事変圧器の巻線電圧の公式とは?4.44(正弦波)と4(方形波)の違いをメーカーが解説

インバータの出力に直流成分が生まれる原因

フルブリッジ(Hブリッジ)は、トランスに +V と −V を交互に加えます。電圧の高さは電源電圧でほぼ決まるので、正負の差が生じるのは主にパルスの幅(時間)です。正のパルスが負のパルスより Δt だけ長いと、1周期ごとに V×Δt のボルト秒積が戻らずに残ります。その結果、Bは1周期ごとに次の量だけ片側へずれます。

$$\Delta B = \frac{V\,\Delta t}{N A_e}$$

このとき電圧の平均値(直流成分)は、周期をTとして Vdc = V × Δt ÷ T です。

数値で見てみます。入力400V・スイッチング周波数50kHz(周期20µs)のフルブリッジで、正負の幅の差が Δt = 20ns、つまり周期のわずか0.1%だったとします。直流成分は0.4Vにすぎません。しかし、断面積354mm²のフェライトコアに27ターン巻いたトランス(Bm ≈ 0.2T)では、Bは1周期に約0.00084Tずれます。飽和までの余裕を0.2Tとすると、単純計算で約240周期、時間にして約5ミリ秒で飽和に届きます。スイッチング周波数が数十kHz以上のインバータでは数十ns、それより低い周波数でもマイクロ秒以下の小さなパルス幅の差が問題になるということです。

直流成分が生まれる主な原因は次のとおりです。

  • スイッチングの遅れのばらつき:素子のターンオン・ターンオフの遅延は数十〜数百ns程度あり、素子・ゲート駆動回路・温度によって異なる。この差がそのままパルス幅の差になる。
  • デッドタイムの影響:上下アームの短絡を防ぐデッドタイムの間、出力電圧は電流の向きで決まる(還流ダイオードが導通する側に張り付く)。設定値や、正負の半周期での電流条件が非対称だと、実効的なパルス幅に差が出る。
  • 素子の電圧降下の差:IGBTの飽和電圧、ダイオードの順電圧、MOSFETのオン抵抗による電圧降下の違いで、正負の電圧の「高さ」もわずかに変わる。
  • 制御側の誤差:PWMタイマの分解能による丸め、アナログ回路や電流センサのオフセットなど。正弦波を出力するインバータでは、指令値に乗った直流オフセットがそのまま出力の直流成分になる。
  • 操作量の急な変更:デューティや位相差を急に変えた周期や、起動直後にいきなりフル幅のパルスを出した周期は、その周期だけ正負のボルト秒積が変わり、過渡的な偏りが生じる。

こうした差は、電圧波形を眺めただけでは気づかないほど小さいのが普通です。インバータの基本構成とPWMの考え方はインバータ回路とはで解説しています。

偏りはどこまで進むのか ── 積分と抵抗のつり合い

直流成分があると磁束は毎周期ずれていきますが、無限にずれ続けるわけではありません。何が偏りを止めるのかを、時間の経過に沿って見ていきます。

始めのうち:ループが曲線に沿って片側へ移動する

偏り始めのうちは励磁電流が小さく、抵抗による電圧降下 R·i はほとんど効きません。そのためBはほぼ「電圧の積分」どおり、毎周期 ΔB ずつ片側へずれていきます。このとき、材料の性質であるB-H曲線そのものが動くわけではありません。動作点が描くループ(マイナーループ)が、B-H曲線の上を飽和側へ移動していく、というのが正確な姿です。直流成分が正なら右上、負なら左下へ寄っていきます。

飽和に近づく:電流が片側だけ尖る

寄った側のピークが飽和に近づくと、その半周期の終わりでBを少し増やすのに大きなHが必要になり、励磁電流が急に立ち上がります。インダクタンスが一気に小さくなるためです。反対側の半周期は飽和から遠いので、電流波形は片側だけが鋭く尖った形になります。B-H平面で見ると、ループの上端が飽和の天井に張り付き、Hの方向(右)へ長く引き伸ばされた形です。

定常状態:励磁電流の平均がVdc/Rになって止まる

偏りが止まるのは、1周期あたりの磁束の変化が差し引きゼロになったときです。周期的な定常状態ではΦは1周期で元に戻るので、v = R·i + N·dΦ/dt を1周期で平均すると N·dΦ/dt の項は消え、次の関係が残ります。

$$V_{dc} = R\,I_{dc}$$

$$I_{dc} = \frac{V_{dc}}{R}$$

Vdcは電圧の平均値(直流成分)、Idcは励磁電流の平均値、Rは巻線抵抗に素子のオン抵抗や配線の抵抗を加えた、直流が流れる経路全体の抵抗です。つまり偏りは、励磁電流の平均値がVdc/Rに達したところで止まります。これは十分に時間がたった定常状態での関係で、そこに至る途中は、前述のとおり積分でBがずれていく過程です。

問題は、Rが小さいためにIdcが大きくなることです。先ほどの例でRを0.11Ωとすると、Idc ≈ 0.4V ÷ 0.11Ω ≈ 3.6A。27ターンの巻線では約100AT(アンペアターン)の直流起磁力になり、磁路長123mmのコアではHにして約800A/mに相当します。ギャップのないフェライトコアは、Hが数百A/m程度で飽和に近い領域に入るため、この平均電流は飽和した状態でしか流せません。結果として、寄った側の半周期ごとに大きな電流パルスを流し、その平均をVdc/Rに合わせる形で平衡します。

飽和した状態で平衡すると、次のような不具合につながります。

  • 電流ピークの増大による過電流保護の動作、スイッチング素子への過大なストレス(最悪の場合は破損)
  • コアと巻線の損失増加、局部的な温度上昇、効率の低下
  • 商用周波の変圧器では、うなり(騒音)や振動の増加

なお、MOSFETのオン抵抗のように、電流が大きいほど電圧降下が増える要素は偏りを戻す方向に働きます。ただしその効果は上のRにすでに含まれており、計算のとおり、それだけで飽和を避けられるほど大きくはありません。

シミュレーターで確かめる

下の図は、v = R·i + N·dΦ/dt を時間刻みで解き、正負のパルス幅の差Δtと設計Bmを変えたときの様子を示したものです。Δtを大きくすると、③の帯(周期ごとのBの最大・最小)が片側へ寄っていき、④のループが灰色のB-H曲線に沿って飽和側へ移動します。飽和に入ると②の電流が片側だけ尖り、平均電流がVdc/Rに一致したところで落ち着きます。Δtが2ns程度と小さければ、飽和の入口で平衡する場合もあります。

[[sim:dc-bias]]

「Bmに余裕を持たせて設計する」で防げるか

対策としてよく挙がるのが、「設計Bmを下げて、飽和までの余裕を大きく取っておく」という考え方です。結論から言うと、これは部分的に正しい考え方です。

効く場面:一時的な偏りへの保険

Bmを下げれば、飽和までの余裕 ΔB = Bs − Bm が増えます。起動直後、負荷の急変、デューティや位相差の変更といった一時的な偏りは、この余裕の範囲で吸収できます。偏りを検出して補正する制御がある場合は、補正が効くまでの時間稼ぎにもなります(余裕 ÷ 1周期あたりのずれ = 飽和までの周期数)。

また、フェライトの飽和磁束密度は温度が上がると下がります(一般的な電源用フェライトで、室温の約0.5Tに対し100℃で約0.4T程度)。最も厳しい温度条件で余裕が残るようにBmを決めておくことは、偏磁対策以前の前提です。

効かない場面:定常的な直流成分

直流成分が続く限り、偏りの行き着く先は「励磁電流の平均 = Vdc/R」で決まります。このとき巻線が作る直流の起磁力 N·Vdc/R は、Bmの余裕とは別に決まる量です。ギャップのない高透磁率のコアでは、飽和に必要な起磁力がもともと小さいため、多少余裕を積み増してもいずれ同じように飽和側で平衡します。Bmの余裕は「いつ飽和するか」を遅らせるだけで、「飽和するかどうか」はほとんど変えられません。

Bmを下げるために巻数を増やすと、同じ巻線スペースでは線が細く長くなり、抵抗はおよそ巻数の2乗で増えます。その分Idcは下がりますが、根本的な解決にはなりません。上のシミュレーターの条件(Δt = 20ns)では、Bmを0.2Tから0.1Tに下げると、飽和に届くまでの周期数はおよそ3〜4倍に延び、電流ピークも半分以下になります。それでも最終的には飽和側で平衡し、ピーク電流は偏りのないときの数百倍に達します。

代償:大型化・コスト・銅損

Bmを下げるにはNかAeを増やす必要があり、コアの大型化、巻線量の増加、それに伴うコスト増と銅損の増加を招きます。高周波トランスでは、Bmはもともと飽和ではなく鉄損(発熱)で制約されることが多く、鉄損と銅損のバランスから大きく外れるほどBmを下げると、効率とサイズの両面で不利になります。

評価のまとめ

観点

評価

起動時や過渡時の一時的な偏りを吸収する

有効。飽和までの余裕が増える

補正制御が効くまでの時間を稼ぐ

有効

定常的な直流成分による偏磁を防ぐ

不十分。平衡点はVdc/Rで決まり、Bmの余裕とは別の話

副作用

コア・巻線の大型化、コスト増、銅損増

Bmの余裕は「保険」であって「治療」ではありません。根本対策は、直流成分を作らない・止める・検出して戻すことです。直流が重なっても飽和しにくいコアにしたい場合は、ギャップを入れる方法があります。

インバータ駆動の高周波トランスでの主な対策

フルブリッジなどで高周波トランスを駆動する場合の典型的な対策を、考え方ごとに整理します。実際には、回路方式と制御方式に合わせて複数を組み合わせます。

考え方

具体策

ポイント・注意点

作らない

ゲート駆動回路とデッドタイムの対称化、素子・ドライバの特性をそろえる

数十nsの差でも効くため、駆動回路の遅延や配線の対称性まで見る

作らない(過渡)

ソフトスタート、最初のパルスを半幅にする、デューティや位相差の変更を正負の半周期で対称に反映する

起動直後のBはゼロや残留磁束から始まるため、いきなりフル幅のパルスを出すと片側に振れる

止める

一次巻線に直列コンデンサ(直流阻止コンデンサ、ブロッキングコンデンサ)を入れる

直流分はコンデンサの電圧として吸収される。電流によるリプル電圧や、インダクタンスとの共振を考えて容量を選ぶ。ハーフブリッジでは分圧コンデンサがこの役割を兼ねる

検出して戻す

一次電流の直流分や正負のピーク差を検出し、パルス幅を補正する(偏磁抑制制御)

負荷電流に埋もれた小さな直流分を見分ける必要があり、センサのオフセットが効く

検出して戻す

ピーク電流モード制御

各半周期を同じピーク電流で打ち切るため、偏りを抑える方向に働く。直流阻止コンデンサと併用するとかえって偏りやすくなるとされ、一般には組み合わせない

耐える

コアにギャップを入れて実効透磁率を下げる

同じ直流起磁力でもBが上がりにくくなる。代わりに励磁電流が増え、ギャップ周辺のフリンジング損も考慮が必要

耐える

設計Bmに余裕を持たせる

一時的な偏りへの保険。定常的な直流成分には効かない

DABコンバータのように両側にアクティブなブリッジを持つ回路では、一次側・二次側どちらのブリッジの非対称も偏磁の原因になります。また、位相差を急に変えた直後に過渡的な直流偏磁が生じることが知られており、移行時の位相差の変え方を工夫して偏りを打ち消す制御が研究されています。トランスと直列に直流阻止コンデンサを入れる構成もよく用いられます。

関連記事DABコンバータ(デュアルアクティブブリッジ)とは?双方向・絶縁の仕組みと高周波トランスの役割

トランスの仕様を決めるときに確認したいこと

直流偏磁は、回路・制御とトランスの境界で起きる現象です。トランスの設計や選定の段階で次の条件を共有しておくと、Bmやギャップの前提がそろい、後からの手戻りを減らせます。

  • 回路方式と制御方式(電圧モードか電流モードか、直流阻止コンデンサの有無)
  • 最大のボルト秒積(入力電圧の上限、周波数の下限、最大デューティ。起動時や過渡時も含む)
  • 起動・停止のシーケンス(ソフトスタートの有無、最初のパルス幅)
  • 使用温度範囲(高温でのBsの低下を見込むため)
  • 許容できる励磁電流(ギャップを入れる余地があるか)

まとめ

  • 直流偏磁は、巻線電圧のわずかな直流成分によって、コアの磁束の往復が片側へ寄る現象。
  • ファラデーの法則 v = N·dΦ/dt から、Bの変化量はボルト秒積÷(N×Ae)。電圧が磁束を決め、電流は結果として決まる。設計式 V = 4.44fNBmAe(正弦波)、V = 4fNBmAe(方形波)は、正負のボルト秒積がつり合っている前提の式。
  • インバータでは数十nsのパルス幅の差でも、数ミリ秒で飽和に届きうる。偏りは励磁電流の平均がVdc/Rになるまで進み、抵抗が小さいため多くは飽和した状態で平衡する。
  • Bmに余裕を持たせるのは一時的な偏りへの保険としては有効だが、定常的な直流成分の対策にはならず、大型化・コスト増・銅損増を伴う。
  • 根本対策は、直流を作らない(対称化・ソフトスタート)、止める(直列コンデンサ)、検出して戻す(偏磁抑制制御・電流モード制御)、耐える(ギャップ)の組み合わせ。

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