高電圧のトランスやリアクトル、ケーブルの信頼性を語るうえで避けて通れないのが「部分放電(Partial Discharge:PD)」です。名前は聞いたことがあっても、「絶縁破壊とどう違うのか」「なぜ製品寿命に効くのか」を正しく説明できる方は多くありません。本記事では、高電圧トランスの設計・真空注型・自社評価まで手掛ける北川電機(KEC)が、部分放電の仕組みと、メーカーだからこそ語れる「ボイドを作らない・電界を集中させない」ものづくりの勘所を解説します。
部分放電とは?
部分放電とは、絶縁体の一部だけで局所的に起こる放電現象です。電極間の絶縁が完全に破壊(=絶縁破壊、フラッシオーバ)される手前で、絶縁体の内部にある微小な空隙(ボイド)や、電界が集中する箇所で、ごく小さな放電が“部分的に”発生します。1回あたりのエネルギーは小さく、放電量はピコクーロン(pC)オーダーで測られます。ポイントは、部分放電は「絶縁破壊の前段階」だということです。すぐに機器が壊れるわけではありませんが、放置すると絶縁を内側から少しずつ蝕んでいきます。
なぜ部分放電は起こるのか
部分放電の多くは、「絶縁体の中で電界が局所的に強くなる場所」で発生します。代表的な要因は次の通りです。
要因 | 内容 |
|---|---|
ボイド(空隙) | 注型樹脂や含浸ワニスの中に残った気泡。空隙内は周囲より絶縁が弱く電界が集中し、放電の起点になる |
電界集中 | 導体のエッジ・突起・異物など、電気力線が密集する形状。局所的に絶縁の耐力を超える |
沿面(表面)汚損 | 絶縁物表面の汚れ・吸湿により沿面で放電が進展する |
界面剥離 | 導体と絶縁物、絶縁物同士の界面に生じた微小な隙間 |
とりわけボイド(気泡)は、製造工程で作り込まれてしまう最大の要因です。ここが、設計だけでなく「製造の腕」が問われる部分になります。
部分放電が引き起こす問題
部分放電そのものは微小ですが、繰り返し発生することで絶縁材料を化学的・物理的に劣化させます。放電による局所的な発熱、活性種(オゾン等)の生成、微小な浸食(トリーイング)が進み、やがて絶縁破壊に至ります。つまり部分放電は、高電圧機器の“見えない寿命時計”のようなものです。出荷時は問題なくても、数年後の絶縁破壊の芽になり得ます。
部分放電の測定(PD試験)
部分放電は目視できないため、部分放電試験(PD試験)で評価します。試験電圧を上げていき、放電が始まる電圧(部分放電開始電圧:PDIV)や、放電が消える電圧(消滅電圧:PDEV)、規定電圧での放電量(pC)を測定します。要求仕様に対して十分な余裕があるかを、数値で確認するのが狙いです。
部分放電を防ぐ設計・製造(メーカー視点)
部分放電対策は、「ボイドを作らない」「電界を集中させない」「適切な材料を選ぶ」の3つに集約されます。北川電機が実際に行っている観点を挙げます。
- 真空注型・真空含浸でボイドを除去:樹脂やワニスを真空環境で含浸・注型し、内部の気泡を徹底的に抜く。部分放電の最大要因であるボイドを源から断つ。
- 電界緩和の形状設計:導体のエッジをR形状にする、電界緩和層を設けるなど、電気力線が一点に集中しないよう設計する。
- 絶縁材料の選定:使用電圧・温度・環境に合わせ、絶縁耐力と部分放電特性に優れた材料を選ぶ。
- PD試験による裏付け:設計・製造の狙いどおりに部分放電が抑えられているか、自社の評価設備で確認する。
これらは、設計と製造と評価が一体でなければ実現できません。「カタログの耐電圧値は満たしていても、内部で部分放電が起きている」という状態を避けることが、高電圧機器の長期信頼性の鍵になります。
北川電機の高電圧トランス
北川電機は、15kV級の高電圧トランスなどを、真空注型・含浸を含む一貫体制で設計・製造しています。部分放電を抑え込む封止・電界設計と、PD試験を含む自社評価により、高電圧・高信頼が求められる用途に対応します。
まとめ
- 部分放電とは、絶縁体内部のボイドや電界集中部で起こる局所的な放電で、絶縁破壊の前段階。
- 微小でも繰り返すと絶縁を劣化させ、経年で絶縁破壊・故障を招く。
- 最大の要因は製造時のボイド(気泡)。真空注型・含浸で除去し、電界緩和設計と材料選定、PD試験で抑え込む。
高電圧・絶縁で「部分放電を抑えたい」「既製品では放電が出る」といったご相談は、設計から真空注型・評価まで一貫対応する北川電機へ。お問い合わせ・高電圧トランス。








